旭川の歴史をめぐるタイムトリップへご招待

時にはまじめに歴史を振り返る旅はいかが?北海道の歴史を語る上で、古くからこの地に住むアイヌ民族と屯田兵による開拓は切り離せない関係があります。蝦夷地としてのアイヌ時代、明治維新からの開拓時代、旭川はどのような場所だったのか。貴重な展示品とともに学べる施設を紹介します。

アイヌを知る

アイヌとは「人」という意味のアイヌ語で、北海道を中心に自然と共に暮らしてきた先住民族のこと。北海道の地名にはアイヌ語が多く使われ、旭川もその一つと言われています。大雪山の麓に住む人々は特に「上川アイヌ」と呼ばれ、カムイ(神)と共に生きてきました。魔神と英雄神の激闘が行われたとされる神居古潭、崇めた神々と人間を繋ぐ聖地であったチノミシリ(嵐山)、鹿をも掴む大きな鳥がいたと伝承されるチカプニなど、今でも市内に多くの聖地が残されています。

■日本最古で唯一の私設アイヌ資料館

一本の丸太を削って作った大きな舟。ほかにもアイヌに伝わる刺繍の模様が美しい服や耳飾りなども展示

上川地方を代表するアイヌの旧家・川村家第8代当主の川村カ子ト(かねと)氏が、生前アイヌ民族文化の正しい伝承を目的として大正5年に作った日本最古の民営アイヌ資料館。アイヌの文化や習慣を伝える生活用具など貴重な資料が数多く展示され、祈りの儀式について、アイヌにとっての熊の存在などをパネルや映像とともに紹介しています。

北海道名物としても有名な木彫りの熊は、実は旭川のアイヌの手により誕生しました(注)。館内にはアイヌの代表的な彫刻家・砂澤ビッキ氏による木彫りの熊やトーテムポールなども展示されています。またアイヌに伝わる楽器「ムックル」の制作・演奏や、衣装を着て記念撮影など多彩な体験もできます。

竹を削ってムックルを作っているところ。製作体験ではちゃんと音が出るようにサポートしてくれます

入館料
大人800円 大学生600円 中高生500円 小学生300円
体験プログラム(一部)※要事前予約。お問合せ下さい
・ムックル制作体験 1,500円
・ムックル演奏体験 1,500円
・ししゅう体験 2,500円
・アイヌ衣装での撮影 500円

川村カ子トアイヌ記念館

住所/北海道旭川市北門町11丁目
電話/0166-51-2461
営業/9:00~17:00(冬期間は10:00~16:00)
定休/GW~11月まで無休、冬期12月~GW前まで
火曜日定休

http://k-aynu-mh.jp

■アイヌの暮らしや歴史、交易を多彩な資料で

暮らしの道具に感謝しその魂を神の国に送り返す儀式「イワクテ」。旭川嵐山で見つかった現代の儀式の跡には、乳児用メリーも置かれていました

「アイヌの歴史と文化に出会う」をテーマに、平成20年にリニューアルしました。祭具や生活用具、狩猟採集具など、アイヌ民族に関する数多くの資料が展示され、上川アイヌの文化や歴史を多彩に伝えています。館内の入り口付近には、交易の品物にもなった鮭を干す女性のようす、また鉄製品の鍛冶仕事のようすを精巧な人形模型で表現していて、アイヌの人々の暮らしぶりを伺うことができます。さらに大陸やサハリンなど北方民族との交易の跡を伝える資料からは、日本人とだけでなく、他の民族と複雑な関係を築きながら広大なエリアを行き来していたことがわかります。今を生きるアイヌの人々による道具の展示もあり、アイヌの今昔を知るには外せない場所です。

地元アイヌの人々の手による、伝統的な民族の衣服や道具。このほか館内で展示されている実物大のササ葺きのチセも、アイヌの人々の協力で作られました

入館料
大人350円、高校生230円、中学生以下は無料

旭川市博物館

住所/北海道旭川市神楽3条7丁目(旭川市大雪クリスタルホール内)
電話/0166-69-2004
営業/9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休/第2・第4月曜日(祝日の場合はその次の日)、年末年始 ※6月~9月は無休

■「チノミシリ」にあるアイヌの家「チセ」

3棟あるうちの1つ「ポロチセ」は現在修復中で、2022年度内に完成予定

旭川北部に広がる嵐山はアイヌの人々から「チノミシリ」と呼ばれ、「祈りの山」として崇拝される場所でした。現在嵐山の一部は自然公園となり、その中にアイヌ文化の森・伝承のコタン(集落)は作られました。

ここにはチセと呼ばれるクマイザサで作られた住居や食糧庫のプーが復元されています。営業時間内には中に入ることもでき、当時の暮らしを垣間見ることができます。

また、嵐山公園センター内にはアイヌの女性が担ってきた植物利用に焦点をあてた展示をしています。入場無料なのでぜひあわせて立ち寄りたいスポットです。

センターではパネルのほかにも展示品がずらり
アイヌ文化の森・伝承のコタン

住所/北海道上川郡鷹栖町9線西4号
電話/0166-55-9779
営業/9:00~17:00
定休/毎月第2・4月曜日(祝日にあたる場合は翌日)※4~10月は無休
年末年始(12月30日から1月4日まで)

開拓時代を学ぶ

明治維新後、旧幕府側の武士たちは禄を奪われ窮乏しました。そのような士族の救済と北海道の開拓、北方警備を担うために、明治政府によって北海道各地に組織的かつ計画的に移住・配備された人たちが屯田兵です。明治25年にはじめて旭川へも屯田兵が派遣されました。

■米どころ・東旭川の誕生

居間と台所の様子。障子の奥に小さな二間があり、寝室として利用されていました

東旭川にある旭川兵村記念館は、開拓時代に屯田兵がどのような暮らしをしていたのかがわかる住居が復元され、実際に使われていた生活用品や農機具も展示されています。

手動の鋸で大木を切り倒し土地を広げたものの、水はけが悪く、畑に向かない土地ゆえに試行錯誤のうえ水田として開拓された東旭川エリア。上川百万石と呼ばれるまでの道をどのように歩んだのか、先人たちが知恵を凝らして生み出した逸品の数々とともに紹介しています。

明治38年に屯田兵の父・末武安次郎によって考案された「たこあし」と呼ばれる種もみの直播器。効率が飛躍的向上し、急速に普及されました

また旭川市指定文化財に指定される、屯田兵の血と汗の記録が綴られた「旭川兵村中隊記録」や「屯田物語原画綴」など数々の記録と遺品も見られます。

入館料
大人 500円
高校生・大学生 400円
小中学生・身障者 200円
※20名以上は100円引き

旭川兵村記念館

住所/北海道旭川市東旭川南一条6丁目3-26
電話/0166-36-2323
営業/9:30~16:30
定休/火曜日
10月下旬から4月下旬(年により変動あり)は冬期休館しています。事前に電話予約いただけると休館期間も見学できますが、暖房はありませんので温かい恰好でお越しください

http://a-heison.sakura.ne.jp

■開拓と防衛の歴史資料を展示

旧陸軍の機密文書「第七師団歴史」や、記念館設立のきっかけとなったコサック騎兵軍刀など、貴重な資料を展示しています

北海道の防衛と開拓に携わった屯田兵や旧陸軍第七師団の歴史、また戦後の警察予備隊から陸上自衛隊第2師団に至るまでの変遷や地域との関わりなど、全国からの貴重な寄贈品を含めた2500点に及ぶ資料を見学することができます。初代第七師団長で上川エリアの開拓にあたった永山武四郎の記録、師団関係者が着用した大礼服や軍服、軍刀や銃剣など1点1点に見ごたえがあります。

近年は人気漫画「ゴールデンカムイ」で第七師団の注目度が上がり、ゆかりの資料がずらりと並ぶ同館は、いまや全国からファンが訪れる聖地。希望者には勤務員が館内を案内してくれます(60分版・30分版あり。6月~10月は混み合うため事前予約がおすすめです)。

館長手作りの軍服や軍帽でコスプレ撮影も!(コロナ禍の現在は休止中)

入館料 無料
駐車場 無料

北鎮記念館

住所/旭川市春光町国有無番地(旭川駐屯地隣)
電話/0166-51-6111(内線2496)
営業/【4月~10月】9:00~17:00 【11月~3月】9:30~16:00
定休/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始

https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/hokutin2/top.html

■華やかな時代を伝える重要文化財

美しい白亜の洋館。平成24年から29年に、耐震補強をはじめとした大規模改修を実施。できる限り建設当時の土台を生かしながら、修復・復元にあたりました

明治35年に旧陸軍第七師団が旭川に設営された際、将校たちの社交場として建設された建物です。師団関係者の会議や結婚披露宴、宿泊等に使用され、皇太子時代の大正天皇や昭和天皇が来旭した際には行在所としても使われました。全国に6つ残存する偕行社の中でも大きな木造二階建てで、当時には珍しい洋風の本格的なクラブ建築の特徴を持ち、意匠も優れていることから、平成元年に国の重要文化財の指定を受けています。

終戦後は第七師団の解体とともにアメリカ軍の将校クラブとして利用されました。その後は旭川郷土博物館、現在は旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎を記念した彫刻専門の美術館にその役割を移しています。

小説家の芥川龍之介にも讃えられた「若きカフカス人」(奥)をはじめ、短い生涯で12の作品を遺した中原悌二郎の記念館として活用されています
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館

住所/北海道旭川市春光5条7丁目5
電話/0166-46-6277
営業/9:00~17:00
定休/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始 ※臨時休館あり

https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/sculpture/

ロシアなど北方への守りを固める軍都として生まれた旭川。開拓の時代を俯瞰してみると、入植者たちの情熱、アイヌの人々が独自に紡いできた歴史など、この地を舞台に多様な動きがあったことがわかります。旭川だけのダイナミックな物語に目を凝らし、耳を澄ませてみませんか?

(注)「北海道土産の木彫りの熊」については、道南の八雲を中心として郷土民芸品として発展したというルーツもあります。
八雲の木彫りの熊について詳しくは「八雲町郷土資料館・八雲町木彫り熊資料館|はこぶら」をご参照ください。

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